今回は、藤沢久美さんの「最高のリーダーは何もしない」をブックレビューしたいと思います。副題が「内向型人間が最強のチームを作る!」となっており、リーダー職の方の中で、「自分にはカリスマ性がないなー」、または「強いリーダーシップを発揮できていないなー」、とお悩みの方には、勇気づけられる書籍だと思います。

藤沢久美さんはこれまで中小零細企業から大企業までの1000人以上のリーダーを取材して、「最前線で活躍しているリーダー達にはある共通点がある」と伝えています。

「一流のリーダーは、権限を現場に引き渡し、メンバーたちに支えられることで、組織・チームを勝利へと導いている」

そして、「一流のリーダーの多くは、内向的で、心配性で、繊細であるということ」と、述べています。

つまり、これまでのリーダーというのは、「即断即決、勇猛果敢、大胆、カリスマ性、頼りになるボス猿」というイメージが定着し、一見、理想的なリーダー像のようですが、実際はそうではなく、そのリーダー像は過去のものとなっているのです。

そして、今のリーダー像はどの様な思考や発想であるべきなのかを、『6つの発想転換』として紹介しています。

1.「人を動かす」から「人が動くへ」

これまでの20世紀型のビジネスでは、一定の枠組みの下で、ゆっくりと小さな改善をしながら仕事をしていれば、会社や組織は安泰でした。そして、ルールやマニュアルからはみ出ようとするメンバーがいないか注意しながらチームを統率する軍隊の様なリーダーシップが必要でした。

しかし、現代は消費者の価値観やニーズの多様化、そして変化のスピードが早いため、従来のトップダウン型リーダーシップでは全ての決断が市場のスピードよりも遅すぎる結果を招いてしまうのです。

目まぐるしく移り変わる複雑なニーズに対応していく為には、現場にいるメンバー達が自律的に動き、個別に対応するしかありません。

そこで、大事になるのが「ビジョン型リーダーシップ」です。

・働く目的をしっかりと伝え、メンバーが共感し、自ら動きたくなる魅力的なビジョンを示す

・ビジョンをメンバーにしっかりと伝えて浸透さえていく

 

2.「やるべきこと」から「やりたいこと」へ

リーダーのポジションとは、会社を経営するリーダーから、たまたま上司から任命された管理職リーダーなど、実に様々です。

最初からビジョンがしっかりと決まっている人は、極わずかですから、リーダーとなった瞬間から皆が勝手に動いてくれる様なビジョンや、やらされ感ではなく、やりたくなる様な皆が共感うるビジョンを策定していかなければなりません。

例えば、起業家の場合はリーダーの生き方(例:目の前の人を幸せにしていくこと)と一致させたビジョンを経営理念として、全員に伝えていく必要があります。

または、会社で出世して社長になった場合は、会社の価値観をベースに全社員でビジョンを考えても良いかもしれません。

3.「命令を伝える」から「物語を伝える」へ

これまでのトップダウン型は業務の指示、命令をきちんと伝えて、実行してもらうということが主でしたが、変化の速い現代では、ビジョンをしっかりと伝えて、浸透させ、現場の判断で決定してもらうことが大切となります。

そこで、ビジョンを掲げた後は、まずはリーダーが本当の意味で考えに考え抜いて腹落ちして、土台を固めていく必要があります。

そして、朝礼でも会議でもお酒の席でも、繰り返し、繰り返し、ビジョンを語り続けて、メンバーに訴えかけていくのです。

しかし、その伝え方にも工夫が必要となります。

・直観的な言葉だけでなく論理的にわかるように説明する

・メンバーが腑に落ちるまで質問をぶつけてもらい、誠実に粘り強く伝える

・本当に共感してくれる仲間だけで実行する

・合宿など寝食をともにして、お互いに語り合う時間を設ける

・ビジョンを振り返るクレドなどのツールを使う

・第三者(社外の人)の人から社内に浸透させる

4.「全員味方」から「全員中立」へ

トップリーダーは驚くほど繊細で傷つきやすく細部が気になる人であるということです。

失敗を忘れようとしたり、なかった事にしようとする人は良いリーダーになれません。傷つき、悔しい思いを持ち続けているからこそ、同じ失敗を2度とするまいと心に決められるのです。

そして、その細やかさは人間関係にも表れています。例えば、少し前にブームになった田中角栄氏はこんなことを言っています。

「政治家たるもの、自分を好いてくれる人と嫌う人、どちらか一方が増えすぎても、掲げたビジョンを実現することはできない。熱烈な支持者がいる政治家には、同じくらいたくさんの反対派生まれる。だから、好きでも嫌いでもない「中間層」をどれだけ作るかが大切だ」

つまり、「全員味方にすることはほぼ不可能であるが、味方がいるということは反対派もそれなりにいる」ということになります。そこで、中間層を多く作る為の嫌われない細やかさが大切になるのです。

5.「チームの最前線」から「チームの最後尾」へ

権限を現場に引渡し、メンバーたちに支えられていることで、組織を勝利に導くのがビジョン型リーダーですから、最前線で旗を振ることはしません。どちらかというと、人材配置とハンコを押すだけが理想的なリーダーの形かもしれません。

某経営者は、「優秀な若手社員もたくさんいますから、なるべく任せるように心がけています。社長ってみんな偉そうにしているけど、よほどのスーパーマンでない限り、それぞれ専門でやっている人の方が知識も豊富ですから、現場の方が正しい判断を下す確率は高いと思います。

すごく小さな会社だど、社長がみんなを引っ張っていかなければいけないと思いますが、ある程度の規模になったら、あまり社長が率先してはいけないと思います。」と話していました。

とはいえ、すべてを任せて、失敗した場合に本人に責任を取らせるということでは、リーダーへの信頼は揺らいでしまいます。

そこで、任せて見守り、そして、メンバーが窮地に陥ったときに、決して突き放さず、信じようとするリーダーが、「このリーダーを裏切るわけにはいかない」とメンバーの心を鼓舞させていくのではないでしょうか。

6.「きれいごとも」から「きれいごとで」へ

最近の若い人たちは…、というフレーズはいつの時代もなくなりません。よくハングリーであれ、と過去の人たちは言いますが、一世代前の人は「モノやお金にハングリー」でした。しかし、今の若者達は人と人とのつながりといった「精神的な豊かさ」に対してハングリーになっているのです。

仕事の成果についても、「頑張れば給料があがる」ことよりも「なぜ、そのノルマを達成する必要があるのか」、「そのノルマ達成はどんな人たちの幸せにつながっているのか」等の問題が納得しないと、頑張れないのです。

そのため、これからのリーダーが語るべき「成果」とは、「売上、利益、昇進、昇給」ではなく、仕事の先にある「社会への貢献」となります。ですので、ビジョンの中に社会への貢献というキーワードが必要になってきます。

ということで、「最高のリーダーは何もしない」とは、メンバーに共感されるビジョンをつくり、語り続け、その実現のためには誰よりも考え行動し続け、仕事は現場に任せて見守る、そして、窮地にたった時はメンバーを信じ、責任はリーダーがとる姿こそ、最強のチームを作るのかもしれません。